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01
04 4年生。無口な上に人見知りをする性格。色白ではかなげな容姿からは、繊細なガラス細工のような雰囲気が感じられる。
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生徒会財務を務める兄の征一郎に誘われて生徒会に籍を置くが、集団で行動することに慣れていないのか、放課後の活動時間も不在にすることが多い。
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どんなときでも兄の言葉を最優先にする、かなりのお兄ちゃんっ子。
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引っ込み思案な彼女とは、会話ができるようになるまでが大変かもしれない。
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05
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孝平がその言葉を耳にしたのは、生徒会室で財務の手伝いをしている時のことだった。
ふと顔を上げると、東儀白の儚げな横顔が見えた。
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日曜日に、一人で街に出かけます。
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征一郎に向けられた言葉。
孝平は白が断言したことに疑問を覚えた。
白にしては珍しく、兄に対して距離を置いた言葉のように感じたからだ。
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「そうか」
征一郎は特に表情を変えずに頷いた。
そして、礼拝堂に向かう白を目で見送る。
生徒会室には孝平と征一郎だけが残った。
沈黙の中、孝平が口を開く。
「日曜どこに行くんですかね」
「さあな」
「気にならないんですか」
「気にしているように見えるか?」
孝平は少し考えて言った。
「少しは」
「ほう」
征一郎は微かな感心を含んだ双眸でじっと見つめた。
「尾行でもしてみたらどうです?」
冗談まじりに言った。
「一人で何もできない歳でもないだろう」
真剣な答えが返ってきた。
「でも、心配じゃないですか?」
「支倉はどうだ」
そう言って眼鏡のブリッジに軽く触れた。
「心配なら、お前がついて行けばいい」
「俺がですか?」
征一郎は微かに頷いた。
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日曜日、白はデパートの地下にあるショーウインドウを覗き込んでいた。
「どれがいいかな……」
ガラスに反射した人形のように繊細な顔の向こうに、いくつもの高級なお茶が並んでいる。
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「あれ?」
白は反射するガラスに怪しい人物を見つけた。
似合わないハーフズボンに攻撃的なひよこのプリントされたTシャツ。
昆虫のようなピンクのサングラス。
そしてどこかに特攻しそうなマスク。
その人物が、柱の陰から半身を出して華奢な少女を凝視していた。
尋常ではなかった。
しかし白はその人物にとことこと近寄り、笑顔を見せてお辞儀した。
「支倉先輩、こんにちは」
「なっ!!」
怪しい人物は驚愕した。
「……なんでわかった?」
「え? すぐにわかりますよ?」
不思議そうに小首を傾げる。
「でも、今日はずいぶん……」
まじまじと孝平の姿を見る。
「奇抜な格好ですね」
「かなでさんがチョイスしてくれたんだ……」
目線を逸らして答えた。
かなでの『これこそ変装の真骨頂っ』という言葉を思い出した。
どこがだ、と思った。
「でも、どうして私のこと、じっと見ていたのですか?」
「いやそれは」
何かうまい言い訳をしようとした。
「……じっと見たかったから」
酷い返答だった。
白はこめかみに指を当てて考える。
「よくわかりません」
それはそうだ、俺にだってわからない、と思った。
「あの、お暇でしたら買い物に付き合って下さいませんか」
「お茶?」
白は首を振り、両サイドに結んだ髪が揺れた。
「お茶はもう決めたんです。次は和菓子なんですが……」
そう言って、和菓子コーナーに歩き出した。
孝平はその後をついていく。
「全部おいしそうなんです」
幸せそうな顔で呟いた。
「困りました……」
そして溜息。
「少しずつ買えばいいんじゃ?」
「でも、兄さまはそんなに食べないんです」
征一郎へのお土産らしい。
「東儀先輩はどれが好きなんだ?」
「わからないんです」
困ったように言う。
「なにを食べても、『美味しい』としか」
分かるような気がした。
「男の人ってどんな物が好きなんでしょうか?」
期待を含んだ目で、孝平をじっと見つめる。
「俺の好みはまた別だからな」
「そうですよね……」
がっかりしたように俯く。
「あ、でもこの饅頭はこの間食べてたな」
「これは、あまり甘くなくておいしいです」
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img 「いつもは一つしか手を出さないのに、これは二つ食べてた」
白は目を丸くした。
「凄いですね」
「いや、間違いかもしれないけど」
「いいえ、これにしましょう」
「ご意見を伺えて助かりました」
白はそう言って微笑んだ。
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夕暮れの帰り道、白は孝平に聞いた。
「何してるんですか」
「メール」
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クールなように見えて、心配しているはずの征一郎に向けて。
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――心配ないです、とだけ。
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すると、すぐに返信があった。
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――知っている。しかしあの変装は酷いな。
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「近くにいたのか!?」
慌てて辺りを見回す孝平を、白は不思議そうに見ていた。
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戻ります
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