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5年生で、主人公のクラスメート。かなでの妹で主人公とは幼なじみ。とても気配り上手のしっかり者。破天荒な姉の行動にため息を吐く毎日だが、実はそれなりに楽しんでいるようだ。
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明るい性格と面倒見の良さで学年問わず友人が多く、友達の友達まで含めれば、学生全員が知り合いなのでは? というほどの交友関係を持つ。かなでによると、これまで何人かの男子学生に告白されたことがあるらしいが、全て断っているとのこと。しかし本人は否定している。他の女の子の髪を編むのが得意。
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休み時間。
喧噪に包まれた教室の一角。
窓から差し込む明るい陽射しに、悠木陽菜は照らされていた。
椅子に座った同級生の髪を慣れた手つきで編んでいる。
しなやかな指先が髪を美しい曲線へと変えていく。
毛先までの細い三つ編みを完成させると、柔らかな微笑みを浮かべた。
「はい、できたよ」
「さすが陽菜、いいねこれ。ありがとっ」
同級生は満足げに髪を触りながら自分の席に戻っていった。
観客に徹していた二人の男子学生のうちの一人が口を開いた。
「悠木は立派な三つ編み師になれるんじゃねえか?」
冗談めかしに八幡平司が言う。
「ずいぶん限定的な職業だな」
観客のもう一人、支倉孝平は冷静に返した。
「そんな職業があるの?」
陽菜は小首を傾げた。
「ないだろ」
「ない」
司は力強く頷いた。
「だが、あるとすれば悠木はその世界でトップを狙える逸材だ」
「確かに」
「あはは、褒めても何もでないよ?」
少し照れたように笑った。
「なあ、編みやすい髪とかあるのか?」
司は自分の髪に触れながら聞いた。
「聞いてどうする」
「秘密だ。俺の髪でもできるのか?」
「ちょっと短すぎるかな。孝平くんならできるかも」
「よし孝平。俺の代わりにいっとけ」
「どこへだ」
「海外じゃ流行ってんだぜ?」
「たとえ本当だとしても、嫌だ」
孝平は司に手のひらを向けて断った。
「大体俺だって短いだろ。もっと長くないと三つ編み師としては物足りないんじゃないか?」
「うーん、長くて綺麗な髪の方が編んでて楽しいけど」
陽菜は思い出したようにちらり、と視線を向けた。
孝平と司もそれにつられる。
長い艶のある黒髪がそこにあった。
紅瀬桐葉。
近寄り難い雰囲気を放ちつつ、全てに興味なさそうな顔をしている。
「……編んでみたいのか?」
孝平の言葉に、陽菜は小さく頷いた。
「紅瀬さんとはあまり話したことがないから……」
「なるほどな、コミュニケーションを取りたいと」
「機会があれば、そうしたいかな」
「難しそうだな。どう思うよ?」
司の言葉に孝平の返答はなかった。
腕を組んで、何かを考えている。
「……どうした?」
「陽菜、俺に任せろ」
「なにを?」
陽菜の返答を待たずに孝平は桐葉の席へと向かった。
残された二人は孝平の様子を見守る。
「何か話してるね」
「交渉してんのか……?」
「白熱してるみたい」
「孝平だけな」
孝平が険しい顔つきで戻ってきた。
そして真剣な様子で陽菜に告げる。
「俺の髪を編んでくれ」
二人が言葉の意味を理解するまでに暫くかかった。
「何があったの?」
陽菜が心配そうに聞いた。
「俺が編んだら、紅瀬も編ませてくれるそうだ。だから頼む」
そう言って、椅子に腰かけた。
「いいの?」
迷うように聞いた。
「もう引けないんだ」
孝平の意思は固かった。
陽菜は司を見た。
司は重々しく頷いた。
「じゃあ、やるね」
「ああ」
陽菜の指が孝平の髪にそっと触れた。
優しい手つきで編み込んでいく。
心なしか、陽菜は楽しそうな笑顔を見せた。
短い孝平の髪に小さな三つ編みができた。
「できあがり」
陽菜は満足げに微笑んだ。
司は孝平に親指を立てて見せた。
孝平は陽菜に渡された鏡を見る。
そして小さく頷いた。
「よし」
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img そして立ち上がると、陽菜の手を取って桐葉の元へ向かう。
「ちょっ、孝平くん?」
慌てる陽菜を連れて桐葉の目の前へ。
桐葉は憂鬱そうに孝平を見た。
「本当にやったのね」
呆れたように言う。
「次はお前の番だ」
桐葉が口を開こうとした瞬間――
休憩の終わりを知らせる鐘の音が鳴り響いた。
「残念ね」
桐葉が残念ではなさそうに言った。
孝平がそれに反応して口を開きかける。
たぶん文句でも言おうと思ったのだろう。
「あの」
その声に、二人が陽菜を見た。
「今度、一度でいいから編ませてほしいの」
今まであまり話したことのないクラスメート。
孤高の少女に向けて勇気を振り絞った一言だった。
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少しの沈黙。
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桐葉が静かに言った。
「どちらでも」
その言葉に、陽菜は明るく微笑んだ。
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戻ります
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